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Morning Kiss

カレと抱き合って、おはようのキス。
でも、ホントは苦手なんだ。
朝は臭いが気になって

カレのじゃない
アタシの

いつもはカレより早く起きて、さっと歯を磨いてくるのだけれど、今朝はそんなひまがなかった。

ゆうべは遅くて、疲れてて、泥のように眠りこけて

今朝になって、気がつくとカレが横で寝ていて、そう、こういう風に抱きしめられてて

意外と力強い、緊縛感が心地いい。
でも、でもね
しばらく来れないって、言ってなかったっけ?

「びっくりした」
「ああ」
「来れないって、言ってたよね?」
「ああ」

カレの返事はいつも素っ気ない。
でも、沈黙よりはずっとまし。

「遠いところに行く・・・んじゃなかった?(行かないでほしい)」
「うん、しばらく延期だ」
「早く行ってくれば、いいのに・・・(行ってもいいけど、早く帰ってきて)」
「少し、問題があるからな」
「問題・・・って?」
「まあ、そのうちわかるさ」

2週間後、カレは旅立った。
早く帰ってきて、なるべく・・・そう言うのが精一杯。
アタシの部屋は、一気にさみしくなった。
一日目
二日目
三日目
一週間後
一月後

突然、カレから、電話

「旅行、行こうか?」
「旅行? 旅行って海外、アタシパスポート持ってないよ」
「そっか、まあ海外でもいいんだけどな、今回は国内だよ」
「っても、しばらく長期の休みはないし、有給とれるかなぁ・・・?」
「無理矢理にでも取って来なよ」
「無理矢理って・・・ねぇ・・・」

カレにしては強引な提案。
なんだろう? 何かあるのかな?

「あ~それとさ、市役所に出してきてほしいものがあるんだけどな」
「なに? それ??」
「引き出しの一番上に、オレの印鑑入ってるから、あれ使ってな、悪いけど、書類はおまえの方で書いといてくれや」
「・・・・・」
「それとな、服はな、一番お気に入りのやつでさ。オレもあれが好きだからさ」

それだけ言って、カレは電話を切った。

本当に素っ気ない

明日、仕事を早めに切り上げて、市役所に寄ろう。
たぶん、いつもよりは緊張した気持ちで・・・cosmoswhite3.jpg

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アイシテルのサイン

「はざま祥のお話」ってことで、ショートショートを書いてみました。
ちょっと、SF仕立てになってます。
ウラシマ効果のエピソードを使ったお話になってます。

それでは、お楽しみください。

毎日のように、いや、もっともっと頻繁にカレから送られてくる「愛してる」の言葉。
正確には言葉ではない、「愛してる」という意味の信号。
数光年の虚空から送られてくる、単なる信号。
でも、私はそれにすがって生きている。
カレに、もう一度会いたい、と思いをはせなながら。

「えっ ? 帰ってこないかもしれないって、本当なんですか?」
所長は言いにくそうに一度天井に目をやってから
「ああ、本当は黙っておこうと思ったんだが、いずれわかることだから」
「3年って、おっしゃったじゃないですか?」
「うん、それは間違いないよ、ただし、乗組員の体感時間だけれど・・・」
「体感時間って・・・まさか?」
「そう、そのまさかだ」

時間は、光速に近づけば近づくほど進みが遅くなる。
ほぼ、光速になってしまえば、時間の進みもゼロになる。
人類にはそこまでの航行技術はない、というのが定説だったけれど、今それが覆されようとしている。

一介の生理学者である私には、物理のことは専門外だったから、カレが宇宙に探査に出たい、と言ったとき、止めようとはしなかった。
光速に近い速度で宇宙に出る、ということは私の時間だけがどんどん過ぎ去ってしまう、ということにほかならない。
カレにとっての3年が、私にとって、何年になるのか? 計算すればわかることなのだろうが、私には計算方法すらわからない。
わかったとしても、計算する気にもならない。
そこには絶望しか、待っていないから。

「愛してる」がときどき途切れることがある。
私のことは忘れてしまったのだろうか? と不安が胸をよぎる。
でも、その途端、その言葉は再び虚空からやってくる。
私の一喜一憂はつきることがない。

数年が過ぎ、さらにまた数年が過ぎ。
私が経験した、春夏秋冬は、どんどん増えていった。

「アイシテルのサイン」は今でも、虚空からやってくる。
虚無の世界からやってくるサインは、私の中で澱(オリ)のようにたまっていく・・・

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ちょっと、お出かけ

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「ちょっと、出かけへん?」
「ええっ!? もうすぐ陽が落ちるよ」
「うん」
「うん、って。もうご飯作るよ」
「ええから、ちょっと出れへん?」
「そりゃ、いいけどさ、夕食ちょっと寂しくなるかもよ。それか、遅くなるか」
「ええよ、気にせんでも。なんでも腹に入ったらええし」
「まぁた、そんな作りがいのないことを言ぅ」
「うん、ごめん、でも、出たいねん、今」
「いいけど、なんで?」
「そら、秘密や、言われへん」




「え? 車出すんじゃないの?」
「ほんの近所まで行くだけや、車なんか使わへんよ」
「そっか、ついでに買い物でもしようと思って、バッグ持ってきたけど、荷物になっちゃったな」
「ええよ、オレが持ったる」
「いいよぉ、財布が入ってるだけだもん、買い物して重くなったら持ってもらおうとは思ったけど」
「うん、じゃあ、まあ、帰りにコンビニでもよろや」
「そだね、アイスでも買おうか?」




「どこに行くかと思ったら、河原って何よ?」
「うん、まあ、そうやけど」
「ここになんか目的があるの?」
「いや別に、ないけど」
「だったら、なんで、こんなところに来るのよ? ほら、もう真っ暗になってきたし」
「ええねん、オレの顔見える?」
「うん・・・見えるけど、なんか暗くてよくわかんないよ」
「それやったら、ええ」
「何がいいのよ?」
「ちょっと、目ぇつぶってくれるか?」
「暗くてよく見えないのに、目をつぶってもしかたないと思うけど」
「ええから、気にせんと目ぇつぶり」
「いいけど・・・何する気」
「こないするねん・・・・・・」

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