「師長になったんだって?」
「うん、まあね」
「すごいじゃない?」
「まあ、そうだけど、雑用が増えただけよ、それなりの年になっちゃってるしね」
「そっか、でも、すごいよ。お祝いしよう」
「ありがと、してもらえるならしてもらおうかな・・・これからはあまり時間も取れそうにないしね」
「そっか・・・寂しくなるな」
「だったら、結婚しちゃえば? 少なくとも話し相手はできるよ」
「相手いないわよ、誰もおばさんを相手にしないって」
「ウソ! ウワサは聞いてるよ、3年も付き合ってるんだって?」
「ああ、アレね・・・彼氏なんてもんじゃないよ、ただの友達だって」
「ただの友達だって、男じゃん。可能性はなきにしもあらず、だよ」
「恵子の方こそ、どうなん? 再婚とか考えてないの?」
「だって、仕事忙しいもん。息子は手が離れたけどさ」
「克くんももう高校生かぁ・・・早いなぁ・・・初めて会った時はまだ小学生だったよねぇ・・・」
「だよねぇ、知りあってもう6年か・・・」

本当は知りあって、21年経つ、でも恵子は知らない、というか知るはずもない。
その時の私は今とは全然違っていたから、わからないのも無理はない。
自分では当時の面影を指摘することはできるが、他人にはぜんぜん違う特徴に見えるのだろう。
ましてや、一度切れた関係である。
覚えていてくれなくても、全く仕方がない。
少しは覚えていてほしかったな、と思ってそれとなく聞いてみたことはあるけれど、さらりとかわされた。
恵子にとってあまりいい思い出ではなかったのだろう、とがっかりしたが、それも仕方のないことだ。
私にとっても、いろいろショックの大きい思い出だったから。
「早智は、子供欲しいと思わないの?」
「そりゃ・・・ね、思わないでもないけど・・・でもさ・・・ねぇ・・・」
「やっぱ、メンドイ?」
「そういうわけじゃあないよ」
「だったら、なんでさ? そりゃ、うっとうしいことも多いけどね」
「うん、まあ・・・」
「ん?・・・」
「言ってなかったっけ?」
「え? なに?」
「できないんだよね・・・」
「あ~~~そっか・・・悪いこと聞いた、ごめん、そっかぁ、そうなんだ・・・」
「うん、それに今更きついよ、できたとしてもさ、いろんな意味でね」
「そうだよね、お互い老い先長くないもんねぇ・・・へへ・・・」
舌を出した恵子の顔は、年輪と疲労が顔に出ていたけれども、若い頃とそんなには変わらない。
むしろ、背伸びしていたあの頃の顔と比べると、ずっと魅力的に見える。
特徴だった独りよがりさが消えて、人の気持ちになって考えられるようになった。
相変わらず、私のことは思い出してくれないようだが、気持ちを一緒に考えてくれるようにはなっていた。
最近では、思い出してくれない方がいい、と私は思うようになった。
ギクシャクしてしまうくらいなら、このままの方が気楽だ。
「さってと、そろそろ帰ってやんなきゃなぁ」
「そうだね、そろそろ夜だね」
「やっぱ、食べ盛りだからね、早くメシつくれ~~ってさ、ウルサイのよ、野太い声でさ、誰に似たんだろうねぇ?」
「え~~そりゃあ、恵子にでしょうよ」
「あ、やっぱ・・・そおかぁ、まあ、そんなわけだから、帰るわ。実はさ、さっきからカエレコール来てるみたいなんだよね、無視してたけど」
「あ~~~ごめん、気づかなくって」
「いいんよ~色でわかるようにしてただけだからさぁ」
「そっか・・・でも、カエルじゃなくて、カエレなんだねぇ・・・(笑)」
「帰ってくるな、って言われるよりはマシかな? ま、そんなわけだから帰るわ、ごめんね」
「ううん、こっちこそありがとね」
「お礼言うのはコッチのほうよぉ、ご馳走になっちゃって、ありがと」
「いえいえどういたしまして、じゃあ、とりあえず玄関先まで送るわ」
恵子を送り出した部屋はがらんとして、妙に明るかった。
山積みになった流しを片付け、居間のノートPCをダイニングのテーブルに運んでくる。
PCの画面には懐かしい写真が残っていた、一枚だけスキャンして、焼き捨てた懐かしい写真。
私は、肘をついてしばらく・・・スクリーンセーバーが起動するしばらくの間眺めて、それからノートを閉じた。

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とまあ、ここまで書いてきましたが、とりあえず小説のプロローグ、ってところです。こないだ仕事中にシチュエーションを考えてみましたので、ここまで書いてみました。ただし、この先、何も浮かんでないです。
果たして主人公は何者か?
友人の恵子とはどういう関係なのか?
って、なんかバレバレの展開になってしまいそうなので、これ以上は突っこまないようにしましょう。
実際先が書けるのかどうかもちと怪しいですし、とんでもない駄文にありがちの展開になる可能性も・・・
はぁ・・・やめとこかな・・・
そろそろ、何年も構想を温めている物語に決着つける義務もあるような気がするし・・・(^。^;)