スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私小説?・・・1

広い居間のあちこちに荷物が散乱していた。
読みかけの雑誌、読みかけの文庫本、寝袋と、少しばかりの着替え。

来たばかりの古い住宅には、お湯をわかすものも、寝具も、何も・・・ない。

お風呂さえ、入れない。

水は出るよ。
そりゃ、もちろん、水道栓を開けてもらったから、出なければおかしい。
流しの水は最初、少し赤い水を出したけど、しばらくすると、問題なくなった。
手ですくって、口に運んだけど、異臭がするわけでもない。

水が美味しいの、まずいの、味に無頓着なボクにはわからないけれど、ごく普通の水だと思う。

お風呂に水を張る。
古い、すごく古い金属製の浴槽。
サビがあちこちに・・・
でも、腐食しているわけではないので、水が漏れたりはしないだろ、と思った。
漏れたら、漏れたとき、その時は取り替えてもらえばいい、それくらいは言ってもバチは当たらないだろう。

でも、

張ってみて、困った。
沸かし方がわからない。



実家はガス釜で、でも、内側から全部操作できるようないいものじゃなくて、一旦外に出て種火をつけて、それから・・・というタイプだった。
ガスの種火をつけるのは、小さい時から、ボクの仕事。

夕方家にいると、「たつや、つけてきなさい」・・・いつも。
めんどくさいよ、って反論することもあったけれど、母はもう聞いてはいなかった、夕飯の準備か、洗濯物を畳むか、忙しく手を動かしていた。

お湯が沸くと、一番にお風呂に入るのがボクの仕事でもあった。
ボクにやりたいことがあっても、順番は変えられなかった。
片付かない、という理由で、いつもボクが最初に入って、弟が入って、父が入って、最後に母が入る。
これが我が家のお風呂の順だった。

父が最初でもよかったようなものだったけど、でも、なぜか。

一人暮らしになって、いつでもお風呂に入れるようになって、何かすごく自由になれたような気がしたのを憶えている。


今ボクが眼にしているのは、見たこともない、風呂釜。
薪のお風呂は、焚く手伝いをしたことがあったけれど、こういうのは初めてだった。
釜はけっして大きくはない。

高さ50センチ、幅30センチ・・・少しだけ楕円形の筒
そこから、銀色の円筒が伸びている、きっと、天井の煙突につながっている。

上の蓋を開けたり、下の蓋を開けたりしてみたけれど、どうしていいのか・・・
石炭のお風呂ってどうやって焚けば?

さっぱりわからない。


仕方ない。
春の日は、まだ全然明るかったけれど、昨日もお風呂には入っていない。
空港について、電車に乗って、部屋まで連れてってもらって、ご飯を買ってきて、寝袋だけ広げて、寝て

荷物は?
って、聞かれた。
これだけです、この登山ザックだけですよ。
それだけ?
そう、これだけです。とりあえず、暮らすモノ全部入れてきました。

そう言って、ザックをブラブラさせて見せた。
ボクより少し年かさの同僚は、ちょっと唖然としたような顔で、ボクを見た。

まあ、実際、ホントはこれだけじゃないんだけど・・・とは思っていた。
色々説明するのはめんどくさい。
そのうち、分かることだし。

とにかく、昨日ご飯を買ったコンビニに行くことにした。
本州じゃ、見たことのない、オレンジカラーのコンビニエンスストア。
そこで、飲み物だけを買い、近くの銭湯の場所を聞く。
駅前に一軒、もう少し山側に一軒、あるそうだ。
駅前のが、綺麗で、設備も少し立派、だそうだ。

ついでに、石炭を買える、ところを聞く。
銭湯のある通りの、一本南側の通り、公園を横切って、角の通りをすぐ入ったところにあると言う。
謝意を述べて、銭湯まで向かう、駅前の生協も覗いてくるつもりで。
といっても、冷蔵庫もコンロもなんもない。
でも、石けんとシャンプー・リンスだけは必要。
洗わないと、行く意味はない。

銭湯を確認し、石炭屋に向かう。
「阿部燃料店」
屋号が見えたので、すぐここだとわかる。
ひとけはない・・・あまり、大きな声は出したくはなかったけれど。

「ごめんください」

ボクにしては大きな声が、店の天井に響いた。
しばらくして、静寂が戻ってきた。




初めて、北海道に赴任した時のお話です。

と言っても、全然フィクションですよ。
ディテールが違ってますから。

どこを書いて、どこを省くか・・・難しいです。
関連記事

コメント

私小説なので まんがいんく : 2010/08/17 (火) 07:37:46 修正

最後は尻切れトンボで終わります(^^;)
続き、という形では続かないので、つながってないって言わないでくださいね。

最南は行ってないんですが(小笠原ですもん)、最北には5年住んでました。

 DJコンチ : 2010/08/17 (火) 06:50:36 修正

この前の小説からの続きですか?

実体験を元にしているって、まんがいんくさん、大学は沖縄でしたよね?沖縄から北海道って日本の最南から最北まで体験してるんですね?(笑)

DJコンチは関東から離れた事は無いので、そんなの想像すら出来ません!!

煙突 まんがいんく : 2010/08/17 (火) 06:42:22 修正

うちの母の実家は薪のお風呂でした。しかも五右衛門風呂。

結構楽しかったですけど、難しいんですよね

風呂は…。 ふじもとりゅう : 2010/08/17 (火) 01:09:07 修正

こんばんは~☆

ウチの前の実家は銀の煙突付いた風呂でしたよ~。
燃料は灯油。マッチで灯油が染みた芯に火を点けて沸かすタイプでした♪
ちなみに浴槽は杉の木か何かだったよーな?
     修正用パスワード :

管理人にのみ公開 :

トラックバック


<<前の記事へ ▲  次の記事へ>>

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。